みぞれ空

2月1日(木) みぞれ 夕方から曇り 晴れ間

ケアマネさんから電話があった。
山のてっぺんまで送迎可の施設を3カ所探してくれていた。
明日の見学予定時間を大まかに決め、施設に連絡してもらうよう頼んだ。
ただ、お天気が心配。
ここはみぞれだけど、千代美さんの山は雪が降っているだろう。
明日、雪が凍ったら降りてこられない。

千代美さんに電話をした。
声が沈んでいる。
昨夜、ご主人がみかんを一度に10個以上食べているので、そんなに食べないほうがいいと注意したそうだ。
すると、ご主人は形相が変わり激高して怒鳴り散らし、みかんを投げつけてきた。
次々に投げつけられ、力が強いので当たっては潰れた。
痛いのと情けないのとで我慢できなくなって、
「私は出て行くから、あんたは一人できほうげに生きていったらええ!」
と叫び、大げんかになったらしい。

ご主人は千代美さんの三軒隣に生まれ、9人兄弟の3番目、継げる土地も財産もなく、遠縁の千代美さんの家に養子として来て58年になる。酒もたばこも嗜まず、黙々と働いて貯金を増やし、辛抱強く物静かで時にユーモア、間違っても血相変えて怒鳴るような人ではなかった。
認知症になって人格が変わってしまうのは本人の責任ではない。
が、千代美さんはどんなにかつらく、ご主人もどんなにか不安で悲しいことだろう。
アルツハイマーの診断が迅速にできるようになっても、効く薬はない。

大げんかのあと、30分ほどしてから、ご主人は家の鍵も車の鍵も全部集めて隠したそうだ。
出て行かれたら困るからよと、笑いもせずに千代美さんが言う。

大きな雪がボタボタと降っているそうだ。
明日は滑るかもしれないけど、出来るだけ早く見学に行きたいからスタッドレスの軽トラで何とか降りてみると言った。
13時に最初の施設で待ち合わせることにした。

その施設には、母が亡くなるまでの5年近くをお世話になった。
母は老人の施設に行くのを嫌がり激しく抵抗していた。
でも、カラオケ教室を閉じて家ばかりにいるようになった途端にガタガタと崩れるように分からなくなり、刺激を与えなくてはと買い物やドライブに連れ出し話し相手をしていたが、今度は母に時間を取られて私の生活が行き詰まってしまった。
だから、どうしてもデイサービスには行ってほしかった。
話の種に見学だけと騙すように連れ出して、ちょうど水曜日で、施設で紙粘土作りをしていたのを見て、私もこんな作品がほしいから作ってくれないかなと母に言うと、私が喜ぶならと、水曜日だけ行くことを承知した。
それから5年間、母は私が喜ぶだろうと、ほとんど職員さんが作ったに違いない作品を嬉しそうに持って帰った。
もちろん、私も家族も一生懸命に褒めた。
母が亡くなり、それらの作品を一つだけ残して全部捨てた。
母の柔らかい指が残っているようで、見るのがつらかった。

その施設に、明日一緒に見学に行くことになった。

なぜか、千代美さんの家の方に行ってみようと思った。
5キロほど走ると雪景色になってきた。
まだ5キロ以上ある千代美さんの山はずっと奥で、雪で見えない。
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どんどん雪になったので引き返し、2番目に見学する施設に行ってみた。
施設の文字を読むと、心臓がドキドキしてきたので大急ぎで通り過ぎた。
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「もう、ようやらん」といつもいつも怒っているけど、千代美さんは心根は優しい。
ご主人に感謝している。
嫌がるご主人を知らないところに行かせるのは、可哀想で後ろめたくも思うだろう。
行けば行ったでつらがっていないか一日中心配するだろう。

明日、頑張って連れて行ってあげよう。
千代美さんがつらくないように、いいことをたくさん教えて、背中を押してあげよう。

お嫁さんが可愛らしいケーキを買ってきてくれた。
明日は頑張れという意味だろう。
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娘から宅急便が来た。
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気合いが入る玉子せんべいが…
よし!
頑張ろう!
精鋭無比!
  …自分の性格を読まれているようでちょっと悔しい。
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